一番大事で一番嫌いな記憶

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【あなたは良い人ね!】 人やないやろ 【ちょっとだけ違うだけじゃない】 その違いが大きいんやろ 【あなたって冷めてるわね。諦めてるのかしら】 こんな石しかない牢屋閉じ込められとったら何もやる気起きんわ 【じゃあ私が出してあげるわ!来て!】 生まれてこの方、地下の石牢の中から出たことは無かった。出たいとも思ったことはなかった。 だが、入り口から差し込む太陽の光を一度全身に浴びてみたいと少しだけ思ったことはあった。だが、脱走してまでしたいことではなかった。 そして、自分の中で色々グルグルと巡っていた感情をあの女は外へと引っ張り出した。実際に浴びた太陽は驚くほど眩しくて暫くまともに目を開けられなかった。 慣れて来た頃ゆっくりと開けた目が映したのは 自分が飲み込まれているのではと思うほど透き通った青空 口を閉じるのも忘れて初めて見た青空に魅入った。 【どう?外の世界は素敵でしょ?】 腕を引いて前を歩いていたあの女が振り返る。 だが、その顔は真っ黒に塗りつぶされていた。
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