一番大事で一番嫌いな記憶

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「大将君」 声をかけられ縁側の柱に寄りかかり、閉じていた瞳を押し上げる。顔を上げればそこに居たのはハットを被った苦手な男。眼帯をつけた喰えない男、蟲眼だった。 「君が僕が近づいても起きないなんて珍しいね。いつもは『嫌な気配』がしたって目を覚ますのに。そんなに覚めたくない夢を見ていたのかい?」 「阿呆言うな。目覚めが最悪なほど嫌いな夢や」 「そうかい。じゃあ僕という紳士が起きた瞬間目に入ってさぞスッキリしたことだろうね」 「最悪な目覚めの要因はお前も入っとるわ」 えーと唇を尖らせる男を無視し、立ち上がる。 「で、言っといたんはちゃんと出来たんか?」 「勿論!異形達に僕達【次幸】の噂を流しておいたよ。強い仲間が集まってくれればいいね」 「…そうやな」 「君はここが異形達の最後の砦になればいいぐらいに思っているのかも知れないけど僕は違うよ?僕はこの世界全てが異形達の楽園になればいい。次に幸せになるのは僕らだ。ね?大将」 ニッと笑ったその笑顔は毒を含んでおり、見る者が見れば恐怖を感じる表情だろう。 「ほんまに、そんなこと思っとんかいな」 吐き捨てるように言い、その場を離れる。 「…さぁ、どうだろうね」 そんな呟きも興味はない。
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