一番大事で一番嫌いな記憶

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異形とは生まれつき、人間と違ったところを持つ者を言う。黒羊は角、蟲眼は右目が人と違ったようだ。蟲眼は決して眼帯を外そうとしないため、あの眼帯の下を見た者はまだ誰もいない。 更に理由は分からないが、人には稀に備わる属性の力を異形ならば必ず持って生まれる。しかも、その力は人が持つ力より遥かに多い。その事実が分かるのと同時に、力のない人々は異形を恐怖し、差別し、監視下に置くことを選んだ。 これに反発した者達が人間を殺し、そんな異形を殺す為に力を持った人間達で組織された退治屋が出来た。そして、生まれた異形はその退治屋で飼いならすというルールが自然と出来上がった。 黒羊が居た組織はその退治屋の中でもかなり大きい組織に分類された。黒羊はそんな組織から逃げ出し、更に8年後その組織全てを一人で潰した。 その事実は瞬く間に異形の間で広まり、異形の中の希望になってしまったのだ。 だが、彼の本質の目的は希望などではなく、他者にとっては絶望でしかない。 しかし、彼自身にとってはその身全てを救う希望なのだ。 【絶対に!絶対にお前を殺してやる!!!】 【僕達が絶対に!!】 そう泣きながらわめいたあの子供。あれらが生きているのかも良く知らない。
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