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茶葉を濾したアールグレイを、大量の氷が入った容器へ移して一気に冷やす。これが濁らない二つ目のコツだ。その間に温まった牛乳とディンブラを合わせる。
「ケーキ、できたよー?」
あと少しというところで月哉の声が聞こえた。
「あぁっ! もうちょっとだったのに……!」
今日は上手くいかなかったらしい。冷やしていたアールグレイを氷入りのグラスへ移し替え、ミルクティーの茶葉を濾しながらティーカップへ入れる。
「はい! こっちもできましたよ!」
それでもほとんどタイムラグ無く、準備ができた。綺麗にデコレーションされたシフォンケーキの皿が乗ったお盆に、カップとグラスも乗せる。
「ありがと」
月哉は小さく礼を言って、女子高生たちの元へ向かった。
どんな些細なことでも何かをしてもらったら礼を言う、という月哉の姿勢は見習うべき点だと思う。
それは雪も同じだ。礼だけでなく、自分がミスをした時には年下の晃大に対しても潔く謝ってくれる。雪がミスをすることなど滅多にないが。
逆に晃大がミスをすることは多々あるが、叱られてもその理由がはっきりしているから理不尽だと思うことはない。もちろん上手くできれば思い切り褒めてくれる。
社会人として初めて働く場所に、そういう人間として尊敬できるような人たちがいたことは、晃大にとって幸せなことだった。
「おまたせしました――」
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