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 内定が貰えていないのも、そもそも求人の絶対数が少なくて、試験を受ける機会がほとんどないせいだ。受験しなければ合格も不合格もない。  ここは店の佇まいからして、恐らくは個人経営のカフェだろう。晃大が働きたいと願う店の理想に近い。給与も勤務時間も“委細面談”の一言で済まされていてほとんど何も分からないのは不安だが、待遇などだいたいどこも似たようなものだ。少しでも興味を引かれるならば面接を受けてみて、そこで無理だと思ったら、そのときに辞退すればいいのだ。 「でも、この条件は一体なんなんだろう?」  晃大が気になっているのは、求人広告に記載されているにしては不思議な一文だ。 “氏名に花の文字があること”。  幸い晃大は“花森”という苗字なので条件は満たしている。けれど従業員の名前にまで注文を付ける意味を考えると少し怖い。  経営者が変わった信仰を持っているのか。それとも占いオタクか何かで「花のつく名前の従業員がいれば繁栄する」というような結果が出たのか。どちらにしろ、そんな経営者の下では働きにくそうだ。  こちらも待遇同様、面接を受けたときに確認すれば良いのかもしれないが、その面接の場で変な勧誘に合ったりしないだろうかという不安もある。  もしそんなことになったら、振り切って逃げられるという自信はない。     
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