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 雪月花は、ウェイター二人とパティシエ一人の計三人で営業している。 「まぁ、美味しいことは否定しませんけど」  世界一かどうかは別としても、ホテルや有名洋菓子店で修業をしていたこともあるという雪が作るシフォンケーキは、ふわふわ加減としっとり具合が絶妙なバランスの逸品だ。特にスイーツ男子というわけではない晃大も、雪が作るシフォンケーキならばいくらでも食べられると思う。 実際、食後のデザートとして三種類のケーキを何事もなく完食したときには、自分で自分に驚いた。  それでも台風で外出したくない日など二、三日だ。そのたった数日を、シフォンケーキ無しでは過ごせないなどという人はいないだろう。 「少なくとも、僕は雪のシフォンケーキ中毒だけどね」 「それも否定しません……」  そんなに食べてよく太らないものだと思うほど、月哉はよくシフォンケーキを口にしている。「この店がシフォンケーキ専門店になったのは月哉の好物だから」と言われるだけのことはあるというものだ。  ただ、正確にはシフォンケーキ中毒ではなく甘味中毒だと晃大は思う。月哉は休憩時間になると、シフォンケーキに限らず何らかのスイーツを嬉しそうに食べている。     
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