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もちろんそれらのお菓子を作っているのは雪だ。シフォンケーキを焼く合間に、月哉が気まぐれに出すリクエストに応えて、クッキーやシュークリームなどを作っている。
そんな苦労性の雪は、月哉とは高校時代からの友人で、そんな我が儘にも慣れっこらしい。
晃大から見た雪と月哉は正反対な二人だった。
例えるなら静と動、陰と陽。こんなに何もかも違う二人が一緒にカフェをやっているというのが不思議なくらいだ。それでもすでに十年以上友達づきあいをしているというのだから、人と人との繋がりは面白い。
「俺の名前が聞こえたような気がするが、なんの話だ?」
噂をすれば影が差すというように、雪がキッチンからやって来た。プレーンシフォンが乗ったウッドプレートを手にしている。なかなか次のケーキを回収に来ない月哉に焦れて、自分で運んできたのだろう。
人見知りの激しい雪がホールに姿を見せることはほとんどない。
そんな雪のことを常連のゲーム好きな女子高生は、「イケメンのレアキャラがいる」と友人に話していたが、言い得て妙だと思う。今ももしホールに客がいたなら、月哉が自分で取り来るまで待っていたに違いない。
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