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 雪と月哉は中身だけでなく、見た目のタイプも真逆だ。月哉が優しげな王子様だとしたら、雪は凛々しい騎士といったところだろうか。一八〇近い身長と、体力勝負なパティシエらしく細く見えても筋肉がきっちり付いた体は、一七〇cmもない小柄な晃大からすれば羨ましい限りだ。 「別に悪口とかじゃないですよ? 雪さんの作るシフォンケーキは美味しいっていう話です」 「そうそう。僕みたいなシフォンケーキ中毒者は台風でも食べに来たいはずだっていう話」 「くだらないことを言っていないで、仕事をしろ」  雪は呆れたようにため息をついて、持っていたプレートを月哉へ渡す。 「くだらなくはないよ。パティシエの腕がいいかどうかはカフェにとって重要な問題でしょ?  それに、せっかく褒めてるんだからもう少し嬉しそうな顔したら?」  手は素直にケーキを受け取りながらも、口からは雪への辛辣な言葉を吐き出す。そんな月哉に対して、雪が言い返すことはほとんどない。  恐らく月哉の文句が本気ではないことが分かっているからだろう。  はいはいと軽く受け流す雪が気に食わないと、受け取ったケーキをショーケースに収めつつ月哉は不貞腐れている。  ここで一番偉い、経営者という立場のはずなのに子どもみたいだと思いながら眺めていると、アンティークなドアベルが小さな音を立てた。  振り返れば制服姿の女子高生二人組が店に入ってくるのが見える。今までに見た記憶がないから、恐らく初めての客だ。 「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」     
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