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富良野達一行は現在十トントラックの荷台に乗せてもらっている。
幸い、常温で運ぶ鋼材を納入し終えた後だったようで、荷台内はがらんどうだった。
富良野達は綾を中心に円を作って見守りながら、トラックの揺れに耐えている。
幸運が続いている。
阪井もびっくりしていた。
運転手が高校の後輩だからでなく、あの時間帯に車が通る事がだ。
昼間でもほとんど車の通行が少ないのに夜ならなおさらだ。
阪井は富良野にこいつは運がいい、と何度も語った。
富良野は荷台に乗車する前、トラック運転手の篠田に礼を言った。
無精ひげをはやしているが、子供のような笑顔で返した篠田は気にしないでください、と一言話してからこう続ける。
「阪井先輩の頼みじゃなくても、俺病院まで運びますよ……それに、俺だけの力じゃありませんから」
「そうですか……」富良野はきっと阪井さんの助力も含まれているんだろうと考え、富良野は綾を支えつつ、トラックの荷台へ乗車した。
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