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そんな時、彼は綾と出会う。
富良野が週に一回通う定食屋の看板娘だった綾は、いつも屈託なく笑っていた。
富良野は気軽に話しかけてくる綾にほのかな思いを募らせ、思い切って綾を映画に誘いそこから二人でいろんな所へ出かけるようになった。
綾に告白する前誰にも話した事のない自身の悩みを、富良野は綾に打ち明けた。
親身に相槌を打つ彼女の姿に感じ入り、時系列も無視した自身の気持ちを、雑巾内の余分な水分を絞り出すように伝えていった。
綾は即答する。
答えた後、手のひらで顔を隠ししくしく泣いていた。
綾は富良野に答えをしっかり伝えるまで泣いちゃいけない、そう感じた。
でないと、彼に大変な無礼を働くような気がしてならなかった。
「そんな人じゃないよ」
この一言で富良野はどれほど救われたか。
待っていたのか。
一日千秋を越え、暦も数えなくなるほど諦め、忘れかけていたはずであったのに。
以降、富良野は綾の為ならどんな事もしようと誓った。
それは子供にも同じである。
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