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富良野は落胆した。
いくつかの医院に立ち寄るものの、ある所では流行病の患者で院内はごったがえし、受け入れ拒否された。
ある病院では、他には大きな手術が控えているから受け入れられないと無碍にされてしまう。
もっとも、富良野が無保険者であったのも、大きな要因でもあった。
他にもやり様があったのではないかと頭をかすめても、一刻も早く綾を安心させてやりたい思いが先走り、富良野は軽いパニック状態になっていた。
手汗がハンドルをべたつかせ、アクセルの踏む足は硬直して凍ってしまったように富良野には足裏の感覚がなくなっている。
それでもあきらめない富良野は首都高から病院へ向かおうとする。
おんぼろの軽をせっつかせ、首都高の手前まで着く。
しかし、この年のクリスマスはちょうど連休が重なっていたため入り口にたくさんの乗用車が並び、ショーケースの中身を飾るスポットライトのようにチカチカしている。
ここは……だめだ。
すぐさま富良野は来た道を引き返し、車内のライトを付けて次の病院を探す。
終わりがない走行が続くように感じていた富良野だったが、車のガス欠でストップしてしまった。
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