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そうだ、罪を犯して警察に自首すれば綾を安全な所にやれるんじゃないか。
富良野は自分の考えを実行すべく、辺りを見回す。
コンビニはもう閉まっており、灯りも飲料やたばこの自販機しか灯していなかった。
しかし、運良くタクシーが一台、ウィンカーを出し、富良野が停車しているコンビニの自販機側に立ち寄る。
よれた背広姿がみすぼらしいタクシーの運転手は、車から降りるとたばこの自販機でマイルドセブンを購入した。
富良野はポシェットを着用し車から出る。
ごそごそと釣り銭口に指を入れる運転手の様子を見た富良野は、自分が普段やっている同様の所作を思い出し、我に返った。
たばこを買い終え、社有車へ戻ろうとした運転手はちらと離れた対角線上を見る。
ぼろい軽の前で突っ立っている男とわずかにガタガタと揺れる車。
なんだか怪しいな、ありゃあ。
「ちょっと、あんた。病院まで乗せてもらえないか?妻が産気付いてるんだ!!」
怪訝な顔をした運転手に、正気に戻った富良野は伝える。
おびえた目をした富良野を見て、運転手の阪井は快諾する。
その目は阪井も朝洗面台に立った際に、見慣れた目であったからだった。
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