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「旦那さんですか、陣痛はいつから?」触診しながら、女医は富良野に質問する。
「ええと、一時間半前くらいからです」
富良野に答えず触診を終えた女医は阪井に綾の様子を見てくれと頼み、富良野と二人離れた所に移動した。
「あなたの奥さん、すごい人ね。奥さん、私の見かけだと陣痛が始まったのはもっと前のはずよ」
「えっ!」そんなばかな、痛いそぶりなんてしてなかった。
専門外の私でも触診だけでわかりますから、奥さん……はっきり言って危険な状態ですよ……だから、早く車を何とかしましょう」
「車はあなたのせいじゃないですか」
「そうだけど……私死のうとしたの。ホントはね、けど助かっちゃったからあなた達に協力するの、わがままでごめんなさいね」
富良野の内心はいらいらの限界にあったが、医師の存在が今までになく富良野の気持ちとおそらく妻の気持ちを安心させたと感じられた。
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