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反逆
王族キギンが王妃ジニを訪ねてきたのは、彼女が臨月を迎えたころのことであった。
「奇跡の子」誕生に備えて、祝祭の準備が進められていた。高僧ミッシカを始め、大臣たちから村長、民も家畜も、誰もが走り回っていた。
その慌ただしさを知ってか知らずか、胎児もしきりに腹の中で動き回った。動かずに座っていたのは、王妃ジニと、不死王ナーダだけだ。
「お会いになりますか? お加減が悪ければ、日を改めていただくよう、わたくしから申し上げて参りますが」
侍医アジュラが耳元で尋ねた。窓辺の椅子に腰掛けていたジニは、大きく膨らんだ腹部から手を離し、窓枠を頼りに立ち上がった。
「ミッシカは?」
「お祭りの準備で、朝からお出かけです」
「そうでしょうね。ではアジュラ、付き添いをお願い」
「かしこまりました」
キギンは不死王ナーダの実弟の血筋を引き、王族の中では最大の勢力を誇っていた。体躯の秀でた男で、屋内で会うと窮屈そうに見えるほどだ。髭が濃く、眉も濃く、髪は薄かったが、眼光は鋭かった。
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