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上半身も山吹色のゆったりとした衣をまとっていて、体型はよくわからない。だがご聖体へと変身する過程で、不要となる腸などはすべて取り除かれたという話であるから、胴回りなどジニよりも細いに違いない。さらにその上にあるはずの胸、肩、首筋。そして頭部も絹に覆われていたが、額から顎にかけては素肌が露わになっていた。
直視するのは、なかなかに勇気の要ることではあった。しかしジニは見た。夫となる者の顔を。……見てしまえば、恐ろしくはなかった。ただ、不死とはこういうものなのかと思っただけだ。
「ナーダ王は微笑んでおられる。あなたにはそう見えますか」
「いいえ、ミッシカさま。わたしの目には、王さまの表情がわかりません」
「そうでしょう」
簾を下ろすと、ミッシカはジニを待たせて、どこかへ立ち去った。そしてすぐに、陶器の瓶と杯を手に戻ってきた。
柄のない、白い瓶だ。同じく白無地の杯をジニの前に置くと、ミッシカは瓶から透明な液体を注いだ。
「ご覧の通り、王は死んではおられませんが、生きておられるとも言えません。少なくとも我々と同じ意味での生ではない。私の言っている意味がわかりますか」
「何となく、わかる気がします」
「しかし我々も、このような状態になるときがあります。死んではいないが、生きてもいない」
「それは……眠っているときのことですか」
するとミッシカは、無色透明な水面に陽が差したような、柔らかな微笑を浮かべた。
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