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「ああ、選ばれし娘ジニ、やはりあなたは聡明だ。そう、我々は眠っている時間、最も王の近くにあるのです。つまりあなたは、眠りの中で王と言葉を交わせばよい。この薬酒によって」
「薬酒、ですか」
「いつもよりも深く深く眠ることによって、より王の心に近づくことができましょう」
杯になみなみと注がれた液体からは、確かに酒の匂いもするようだったが、むしろ生薬の青い匂いが勝っていた。とは言え寒村に育ったジニは濁り酒しか見たことがなく、透明な酒はそれだけで神聖なものに感じられた。
ジニは杯を両手に包んで顔の前に掲げ、ミッシカを見上げた。
「これを飲めば、王さまの御心に触れることができるのですね」
「ええ、薬が効いている間は。しかし効き目はそれほど長く続きません。夜明けには、元通りに目覚めるでしょう」
それからミッシカは、ジニの目をじっと見て、怖いですかと尋ねた。ジニは目を丸く見開いて、いいえと答えた。
信じることをためらわない少女の眼差しを、高僧ミッシカは黙って受け止め、再び王の前に進み出て何事か奏上した。そうして呪文を唱え始めた。その声は低く澄んで、灯火が揺れるように強弱を繰り返し、杯の中身よりも薬効がありそうな印象をジニに与えた。長大な呪文がある区切りを迎えたところで、ミッシカから目配せを受け、ジニは薬酒を一息に飲み干した。
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