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のどが焼けた、かと思うと、その熱は血に溶けて全身を駆けめぐった。
灯火の影が急に眩しく燃え立った。
再開した呪文が耳から遠のいていった。
入れ替わりに、誰かの声が近づいてきた。初めは不明瞭な音の連なりだったものが、繰り返されるうちに言葉になっていく。
――ジニ。我が愛しき者よ。
顔を上げ、前を見た。いつの間にかまた簾が上がっていた。灯火に照らされた人影が、座禅を組んでいる。しかし先刻のぞいたときに見た王の姿とそれは、同一人物とは思えなかった。山吹色の衣服の下に筋肉が隆起し、豊かな黒髪が肩口に流れ、瑞々しい頬に呼吸の律動を感じさせた。
まぶたが開いていた。褐色の澄んだ瞳に、光を湛えている。
――さあ。もっと近くへ。
ジニは前へ進み出ようと腰を上げた。足首に力が入らず、よろめきながら王座へ歩み寄っていった。
夫となるべき者の膝まで、あと一歩。
そこで、ジニは膝から崩れ落ちた。意識を失う寸前、誰かのたくましい腕が、肩を抱いた。
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