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「我らがナーダ王は、当年とって二百歳のご聖体であられる。あなたは、天に誓って、王との間に子を成したと言われるのか」  巨大な蛇の這うような波動が、群衆の足元を通り抜けた。  王妃ジニは王族キギンを見返した。その後ろに立ち尽くす、顔色の悪い女の姿も視界に入った。うつむいていて、表情は見えない。  視線を転じて、紗布の向こうに座る夫の横顔を盗み見る。微かに、その口が開きかけたようにも見える。だが無論、錯覚であろう。  夫たる不死王ナーダ――偉大なる木乃伊(ミイラ)は、王座から黙って成り行きを見守っているばかりである。
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