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賢王ナーダが不死王と呼ばれるようになったのは、百五十年余りも前のことだ。彼が王座についたときを境に、この乾いた高地から争いは絶え、罪は公正に裁かれ、家畜は肥えて作物もよく育った。だから人々は、その治世を永遠に延長するべきだと考えた。四十過ぎで病魔に冒されたナーダ自身もその考えを受け入れ、死期を待たずして肉体に防腐処置を施させたのだ。
ご聖体、すなわち木乃伊となった王は、飲み食いもしないし眠りもしない。重要な祭祀のときだけは王座ごと輿に載せて担ぎ出されるが、それ以外はいつも館の奥にいて座禅を組んでいる。そうして、常に人々の暮らしを見守っている。おかげでこの土地は依然として、よそ者に荒らされることも、内乱に見舞われることもない。
誰もが不死王ナーダを敬愛していた。しかし、二百歳を数えた今になって、十六歳の娘と再婚するとは――生身のころに娶った妃は、無論すでに鬼籍にいる――誰も予期していなかったことだ。
「わしらはおまえを誇りに思うよ」
ジニの父は、まるで自分に言い聞かせるように繰り返した。
「この上なく素晴らしいお人の奥方に選ばれたのだからな」
祝言は盛大に執り行われた。高原の広場では、この日のために肥え太らせた豚が丸焼きとなり、酒が振る舞われ、音楽が奏でられた。紗布の向こうにうっすらと見える王、その隣に着飾って正座した花嫁を、皆が心から祝福した。
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