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「一度自殺した霊は苦しみから逃れられ
ないから、他人の体の中に入り込む。
そうすれば、安楽が得られるの。
そして今度は、憑依している人間を
操ろうと企んでいるのよ」
「分かるんですか?」
僕の問い掛けに、勿体ぶったように。
「私にはすべてが観えるの、子供の頃から
何度も見てきたわ」
「憑依現象をですか?」
彼女が、コクリと頷き。
「よくご近所トラブルってあるじゃない?
あれは聴こえない音が聴こえているの。
憑依霊が沢山集まってきて、その人を
弄んでるの。そして、憑依した相手を
自死に追い込むのよ」
「僕も酒を飲み過ぎて泥酔した時、変な所
からオジサンの叫び声が聞こえたことが
あったっけ」
「お酒ほど恐ろしいものはないですわ、
幻聴は全部憑依霊の仕業です。
生きている人間に取り憑き、死に至ら
しめる事によって、自分が死ななければ
ならなかった無念を、晴らそうと
してるんだわ」
除霊の最中、何かが観えた。
僕が分かったのは、幻聴は僕の過去も
未来をも知っているという事だった。
アトランティス大陸に生きていた僕は、
大陸と共に海底に沈んでしまった。
そして、この世に生まれてきた僕は、
近い将来日本国と共に沈む。
・・・時代は繰り返す・・・
アトランティス時代に生きていた民族は、
この世に生まれ代わると、殆どアメリカや
日本人に生まれてきている。
そういう僕も、その中のひとりだ・・・
古代都市大陸の沈没を目撃し、今度は日本
列島の沈没を目撃する。
これが、集団のカルマ。この為に、
僕はこの世に生まれてきたのだ。
幻聴を引き起こす憑依霊は、
アトランティスやムー文明のように、
世界中の人々に憑依して、現代文明を
滅ぼそうと考えている。
大袈裟かもしれないけど、僕には
そう思えてならなかった。
占いの館を出て、駅のトイレで鏡を見ると
穏やかな顔の表情に変化していた。
帰途途中、何故か久しぶりにドキドキ
ワクワク感が心の中に、蘇ってきていた
のを覚えた。
(終)
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