第1章

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未だにiPhoneにフリーズが殆ど無い、 これ程高性能なスマホを造り出す事は、 日本人には不可能かもしれない。 アルコールによる酔いがかなり廻って きた様だ、どうも酒が入ると屁理屈っぽく なってしまう。 しかし、1日のうち僅かでもストレスから 開放される時間があるのは有り難い。 おもむろに再生を止めて、スマホを 横置きにして、カメラアプリを起動。 録画ボタンを押すと、自分で創作した 詩を読み上げた。 「迷うことなく君を愛す、誰にも邪魔 されないパラレルワールドに発進する事を 誓う。いま出発の時!」 酔った勢いで、つい大声が出てしまった。 こうやってスマホに録画して、それを YOUTUBEにアップするのだ。 ユーチューバーと言えば聞こえは良いが、 詩を朗読しているだけなので、再生回数は 伸びるはずもない。 「詩人になりたい・・・」 恥ずかしながら、夢だけは一人前である。 録画が終わると静かに卓上に置いた、ふと 耳を澄ませてみる。 隣りの部屋から声が聞こえてくるのだ、 だが隣りの部屋には誰もいない。 部屋は3部屋に別れているのだが、二階に 住んでいるのは僕だけだ。両隣りの部屋は 空室なのである。 慌ててスマホのボイスレコーダーアプリを 使い、ちゃぶ台の上に置く。 確かに自分には声が聞こえた、それは 僕に対しての誹謗中傷だけである。 最初は驚いたのだが、確かにはっきりと 内耳の鼓膜を揺らすのだ。 隣りの部屋には誰もいない筈、どうして 声だけが聞こえるのか? 覚せい剤や薬物は一切やった事がない、 それなのに・・・ 病院に行くと医者から統合失調症と 診断され、入院を勧められた。 しかし、僕は断った。入院出来ない理由は 容易に想像が出来た。 ネットで調べたところ、現代医学では 脳神経の異常が原因で勝手に脳内に言語が 造られると。 だが、はっきりと耳に聴こえる。 とても、脳内で造られた言語とも 思えない。
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