【第1章】 転生

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第1話 知らない場所 目が覚めたら、知らないところにいたなんて、あまりないことだと思う。 少なくとも、僕にとってはあり得ないことだった。 そこが、真っ白な、巨大空間だったなら尚更だ。暗い所なら、まだ灯を探したり出来るのかもしれないけど、それすらも出来ない。 しかも、直前までの記憶がない。そこに、僕は倒れていた。とりあえず自分の体を確認する。高校の制服を着て、そばには学校用のリュックが落ちている。なんだか軽く感じる体で立ち上がった。 …何もないというのは、違うか。やたらキラキラした胡散臭い長身男(イケメン)がいた。真っ白なゆったりした服をまとい、背中には大きな羽、頭には輪っかを浮かばせている。…典型的な天使が目の前にいた。イケメンは、僕が目覚めたことに気づくと話しかけてきた。 『おはよう、カイくん。目覚めはどうです?』 その一挙一動が、周りにラメのようなキラキラを振りまく。眩しい。やけに声が響いた。 『見てわかったかもしれないけど、私は天使で、ここは天国ってやつですね。あなたは、学校帰りに子供の誘拐事件に巻き込まれて、今ここに居るんです。あ、あなたの守った男の子だけどね、無事みたいですよ』 一気に伝えられた情報を理解するのに数秒。それから、その現実を受け止めるのに数十秒…。 「…………え?」 『まぁ、それが普通な反応ですよね』 アハハ、と快活に笑う自称天使。動きに合わせて、またラメが舞う。 「何、それ。僕そんなことしてないよ」 『ふむ…記憶の混濁が見られますね…それ以外は正常でしょうか』 1人でボソボソ呟く天使。だいぶ電波。 「てかここ、何なの?ドッキリとかにしては、手混みすぎでしょ(笑)」 『……………』 いきなり黙ってしまった。その顔は、困ったような笑みを浮かべている。 「……………」 「…え、まじで?」 沈黙に耐えられなくなる。脇の下を、スーっと冷や汗が伝う。 『マジなんです、申し訳ないけど』 清水 開(しみず かい)、15歳。職業、男子高校生?幽霊(new!) …なんでこんなことになったんだろう?
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