【第1章】 転生

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第2話 慈愛に満ちた脅し() その後、天使の話をよく聞くと、どうやら僕は高校の帰り道に、幼稚園児の誘拐事件に巻き込まれたみたい。 誘拐犯を殴って気絶させ、男の子を助けたはいいんだけど、もう1人の誘拐犯に後ろから刺された、と。幸いにも、男の子には傷はなく、その誘拐犯2人も、異常に気づいた近所の人によって110番通報され、捕まったらしい。 「よかった、あの子は無事なんだね」 聞いているうちに記憶は戻り、男の子が無事なことに安心した。同時に、普段は臆病な僕がそんな行動をしたことに驚く。思い出したはずなのに、誰か別の人の話を聞いているみたいだ。 『ええ、あなたのおかげで。…で、これからのことなのですが』 いきなり深刻なトーンに、少し緊張してしまう。 『死んだ人間は、我々天使により、鑑定を受けます。今まで行ってきたことや、将来性を見るのです。その中で、生かしておいた方が良いと判断される者もいます。そういう人間は、天使により生きていた頃の状態に全てリセットされ、下界に戻されるのです。リセットされる部分は、下界に残った肉体や、周囲の人間の記憶、本人の記憶です。これをしておかないと、下界に戻っても肉体を失った浮遊霊になったりします。周囲の人間に混乱を招いてしまいますからね。あなたも、その1人です。本来なら、今頃はリセットされ、下界に戻っているはずでした。しかし、 慢性的な人材不足で鑑定が遅れてしまい、リセットできる期限を超えてしまったのです。申し訳ありm…』 「ちょ、ストップストップ!」 僕は、天使の謝罪をぶった切った。なんだ、僕生き返れるの!?わぁぁいとか思ってたのに…。 「じゃあ、僕はこれからどうなるの?」 『ええ、カイくんがそう思うのも最もです。本来ならあなたは生きられるのですから。しかし、こうなってしまっては我々にもどうしようもないのです』 『変わりと言ってはなんですが…。カイくん、異世界に転生しませんか?』 「……え?」 『あ、いえ別に強制ではないのですが…。ここに残って、他の死者達と同じように消滅するか、転生するか。どっちが良いですか?』 ニコニコと笑みを浮かべて言う天使。その顔は慈愛に満ち溢れているけど、僕に選択肢は一択しかないよね!? 普通、生きるか死ぬかって聞かれたら、誰でも生きるって方を選ぶじゃん? そんな訳で、僕は異世界に転生することになりました。
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