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ーーー無事にカイが眠り、穴に落ちるのを見届けて、天使は持ち場に戻ろうと踵を返した。
急いで、24時間以内にカイが無事に転生したとの報告書を書かなくてはならない。これを期限内に書いておかないと、カイは、天使からの許しなく転生した違反者とみなされてしまう。
そうなってしまうと、無事転生したとしても様々な不具合が生じ、彼の身に何が起こるか分からないのだ。自分達の不注意で異世界に行くことになってしまったカイのためにも、これ以上悪い方向にいかないようにしなくては…。
ーーしかし、不幸に不幸は重なるものだ。急ぎ飛ぶ天使の後ろに、それは迫っていた。
《トスッ》
『ガハッ……』
白い天界に鮮血が飛んだ。
天使の胸に、黒曜石のような魔剣が突き刺さっている。衝撃で、そのまま前に倒れる。
背後から投げられた魔剣は、30cm程だろうか。長さはないが、背中から胸に飛び出して心臓部分を貫いていた。
『これは…、闇魔法、か…』
天界に住む天使たちにとって、闇魔法は最強にも等しい。息も絶え絶えなその背中に近づいたのは、1人の魔人族だった。
黒い燕尾服を着て、腰までの黒髪を束ねたその男は、柔和な雰囲気を醸し出しているがしかし、目は笑っていない。ふと、その目がカイの落ちた穴に向いているのに気づき、天使は脱力しきった体を強張らせた。
(まさか、転生の妨害に…?)
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