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今までそんなことはなかったが、タイミング的に間違いない。
「…ああ、遅かったようですね。もう逝っちゃいましたか。ふむ、イヴ・グレイソン…?探しておきましょう。まぁ、あなたを止めておけば…、妨害くらいは、出来ますかねぇ?」
天使ですら知らないはずの、カイの転生後の名前を呟く。その言葉を聞いて、確信した。
(そんなこと、させる、訳には…いかない、んですよっ!)
力の入らない体を叱咤し、上半身だけ起き上がる。男の頸(うなじ)に指先を向けた。穴を覗き込み、天使の行動には気付いていない。やるなら今しかない。指先が震え、狙いがフラフラと彷徨う。
《ヒュンッ》
光の刃が指先から飛び、男の顔へ飛んだ。パタ、と地面に血が落ちる。衝撃で飛んだ血が一滴、穴に吸い込まれた。白い床と、鮮血のコントラストが美しい。
(はずした、…)
精一杯の攻撃を外した今、天使の死は必至だった。
「………」
血を拭った手に、多量の血を確認した男が、振り向いた。真っ赤な顔に、凄まじい笑みを浮かべ、手を伸ばした。
《ドスッ》
至近距離で投げられた短剣は、とどめとばかりに頸(うなじ)に突き刺さる。
『……………』
天使が完全に動かなくなったことを確認し、男は消えた。
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