引っ越したそこは……

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引っ越したそこは……

「へえ、いいところだな」 「だろ? 駅から徒歩五分、家賃四万! 好物件じゃね?」 「本当だよな……賢人(けんと)ラッキーだな」  今年の春から大学生となるため、一人暮らしを始めた。 「しかもこの広さ……二LDKだっけ? ヤバくね?」  俺も正直、ヤバイと思った。敷金礼金がなくて、即日から入居OKに惹かれてここにした。 (本当はこんなところ嫌だったよ、でもな――)                    ★☆ 「え!? 出てけって……何でだよ!?」 「あんた、大学に入学出来たら家を出てくって約束だったでしょ!?」  母親の怒声が家中に響く。リビングでテレビを見ていた父親と、妹が顔だけで振り返るのが、横目で見えた。 「それなのにあんたは……いつまでも家探ししないで」 「だったら、一年! 一年だけでいいから実家から――」 「そうやって二年三年ってなるんでしょ!?」  返す言葉が見当たらない。  俺は息を飲み込み、母親の説教を受け続けた。                    ★☆ 「家を追い出されたんだから仕方ないだろ?」
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