0人が本棚に入れています
本棚に追加
引っ越したそこは……
「へえ、いいところだな」
「だろ? 駅から徒歩五分、家賃四万! 好物件じゃね?」
「本当だよな……賢人ラッキーだな」
今年の春から大学生となるため、一人暮らしを始めた。
「しかもこの広さ……二LDKだっけ? ヤバくね?」
俺も正直、ヤバイと思った。敷金礼金がなくて、即日から入居OKに惹かれてここにした。
(本当はこんなところ嫌だったよ、でもな――)
★☆
「え!? 出てけって……何でだよ!?」
「あんた、大学に入学出来たら家を出てくって約束だったでしょ!?」
母親の怒声が家中に響く。リビングでテレビを見ていた父親と、妹が顔だけで振り返るのが、横目で見えた。
「それなのにあんたは……いつまでも家探ししないで」
「だったら、一年! 一年だけでいいから実家から――」
「そうやって二年三年ってなるんでしょ!?」
返す言葉が見当たらない。
俺は息を飲み込み、母親の説教を受け続けた。
★☆
「家を追い出されたんだから仕方ないだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!