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『今日はお兄ちゃんのところ行ってないよ?』
あの後、妹に連絡をすると「行っていない」とメッセージが飛んできた。
きっと帆香さんは俺の妹を知らないから、見間違えたんだと思うが、知り合いに女子高生なんていない。
妹の友達には何人か実家に遊びにきた時に逢ったことはあるが、俺の部屋を教えた覚えがない。
『お前、俺の家のこと教えた?』
『話したことはあるけど、具体的な話はしたことないかな~』
と返ってきたから、友達の線も薄い。
私服姿の女性を女子高生と間違えたんだろうか? でも、俺には女友達は少ない。そもそもこの家を知っているのだって、この間手伝ってもらった二人だけ――。
じゃあ、誰なんだ……?
「そんなことよりも、だ。この後課題をやらないといけないと思うと憂鬱……」
更に深く沈む。口まで湯船に浸かり、よく父親が口ずさんでいた鼻歌を歌う。
「~♪」
風呂場に声が反響して、気分がのってくる。シャワーのノズルから水が垂れて、床に落ちた。腕を風呂場の縁にかけて、胸を張る。窓から入ってくる月明りが、俺を照らすスポットライトに思えた。
「~♪」
(そういや、この歌……タイトル何だっけ?)
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