引っ越したそこは……

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 その日は深く考えるのをやめて、早めに寝ることにした。                    ★☆ 「賢人、課題忘れるなんて珍しいな」 「あー……ちょっと、バイトで疲れてて……」  翌日、大学の食堂で追加で渡された課題をやっていると、友達二人がやってきた。 「あれだろ、隣にあの子がいると思うと……ハァハァってやつか?」 「違うって! 本当に疲れてたんだよ!」  疲れていたというか、何も考えずに寝たかった。  風呂場の窓から見えるのは、向かい側の建物のみ。あとは、俺の部屋と帆香さんのベランダしかない。そこにいたとしても、あの人は【右に向かって歩いて行った】のを見た。 (ベランダとベランダの間って、結構、距離あるよな?)  これが一階ならまだいい。地面を歩いているんだから。  でも、俺の部屋は【二階】にある。 (もしかして、俺――幽霊と会話してたのか!?)  考えないようにしていたが、導き出される答えはそれしか出てこない。 (マジかよ……そうだよなぁ、あそこめっちゃ破格だし……)  頭を抱えてテーブルに伏せて、肺にある空気を全て吐き出した。 「おいおい、そんなに難しいのか?」 「何なら手伝ってやろうか?」 「いや、そうじゃなくて……」 「あ、じゃあ、恋の病か!」 「えっ!?」  コイツらにはまだ、帆香さんに対しての想いを話したことがない。 「お、アタリ?」 「いや、それもあるってだけで……」 (問題は、昨日幽霊を見たってことで――) 「でも、知らなかったな、賢人がロリコンだなんて」 「え?」 「本当だよな~、妹さんと同い年じゃね?」 「は?」 「お前……もしかして、シスコンも入ってる?」  コイツらは、何の話をしてるんだ?  イマイチ話についていけない俺を余所に、二人は話を進める。
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