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「ほいさ、これでいいかい?」
手続きのために渡されていたパッドタイプの端末をスタッフへと手渡す。
「どれどれ…名前よし、生年月日よし…ちょっと待ってくれよぅ」
のんびりした口調で年配スタッフ─奏弥は「オッサン」と呼ぶことにした─が待機を促す。
「はいよ、これでいつでも走りにこれるぞ!絶対無くすなよ?」
暫し待った後にオッサンから手渡されたのは携帯端末とカードだった。
「こっちのカードは?」
「そいつは首都高への鍵になってるんだよ、ちょうどETCみたいなもんだな」
なるほど、これが無いとゲートは開かないわけか、と納得しつつ、奏弥はいくつか質問をする。
「こっちのは…何だこれ?」
「よくぞ聞いてくれた!そいつは首都高サーキット管理局が作った、首都高サーキットに登録されたドライバーのリストと、お前さんの戦績なんかを記録してくれる代物だ!」
アツく語るオッサンの顔を見て、奏弥は首をかしげる。
「持ってるとなんかいいことあんの?」
何となくどういうものかは理解したが、その程度のことならメモするなりでどうにかなりそうなものだ、と奏弥は考える。
「走る時間の制限は?」
「気前よく無しだ!好きなだけ走るといい」
「なるほどね、んでこの…パッド?は他に使い道あんの?」
「あぁ、一緒に走って勝った相手のアドレスが登録されるんだがな、ここを走ってるみんなはそれを使って再戦を申し込んだりしてるみたいだ」
女の子の走り屋に迷惑かけんなよ、とオッサンは笑う。
「…ま、習うより慣れろだな」
「そういうこった!ほれ行きな、俺と喋ってても速くはならないぞ!あ、カードは忘れずに挿しとけよ」
がはは、と笑うオッサン。そりゃそうだ、と頷いて奏弥は車へ乗り込んだ。
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