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スグルと「ケツトモ病」
スグルは「ケツトモ病」、血が止まらない先天性の遺伝病患者だ。
軽症のため大きな外傷がないときはクスリである凝固因子製剤を必要としなかった。
実際、スグルがこの病気であると診断されたの歯科で抜歯をしたとき、出血がおさまらず、大学病院である東都大学病院に回されてきて、診察、検査をうけたときにはじめて自分がそういう病気であることが分かった。
普段は全く必要としないクスリだが万が一をかねて三か月に一回は血液科に通院していた。
主治医の青松医師はボサボサ頭をかきながら「えーと、前のクスリは使わなかったの。じゃあ次回の予約は三か月後でいいかな」とお決まりの三分診察で話を終わらせようとしていた。
「先生、私たち夫婦はこどもを作ることを望んでいます」といった。
青沼医師は予期せぬ出来事で言葉を見失った。
思案しあぐねている様子だった。
「そのような話はカウンセラーがいいかな」といいカウンセラーの伊部氏との話を取り持ってくれた。
そして「伊部氏とのカウンセリングは一か月後でいいかな」といった。
スグルと有里が東都大学に訪れたのは一か月後であった。
妻の有里は冒頭から伊部氏に「頭がいい遺伝子があって、ケツトモ病の遺伝子がない赤ちゃんを格安の値段で提供してくれない」といい、伊部氏を最初から困らせた。
伊部氏からは理想遺伝子を受精卵に組み込みゲノム編集をおこなう、いわば、デザイナーベービーを作製しているという会社や大学などを紹介して貰った。
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