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本当はわたしに事件を思い出させたくないから誤魔化すつもりだったんだろう。でも、もう隠し事をしないという約束を守ってくれた。
それにしても、八千代での出来事なのに郡山で借りを作るなんて……
わたしはふと『天城翔』という名前を思い出した。
萩原先生の友人を見つけてくれた探偵だ。
「それって、天城って言う探偵じゃない?」
叔父さんが眼を丸くする。
「何で知ってるんだ?」
「先生のお見舞いに行った時に、名前が出て覚えてたの」
「そうか。天城翔、本名は三瓶茂子なんだけど、腐れ縁で時々力を貸してもらってる」
「それじゃ、お礼言っておいて。先生、友達が生きていて本当に喜んでいたから」
「あぁ、わかった」
叔父さんは満足そうにほほ笑んだ。先生の事を気にしていたんだろう。
「あのさ……朝ご飯の時、聞けなかったんだけど……」
「お母さんの事か?」
「うん、知ってたの? お母さんが験力を封印した理由」
叔父さんはわたしをジッと見つめた。
「視せられたのか、あの時の事を?」
「うん……」
「そうか……。あの時、あの夏休み、お母さんの様子がおかしい事には気付いていた。それに、玲菜さんが関わっている事も。
でも、それ以上は知らないし、知りたいとも思わない」
叔父さんとお母さんと仲のいい姉弟だから、ちょっと突き放したような言い方が意外だ。
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