62人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれだけが原因じゃないんだよ」
「え?」
「朱理も身をもって知る事になるよ、異能力者がどんな目に遭うか。いや、もう結構知っているはずだ」
それはそうだけど……。
「この自転車は、お母さんが買ってくれたんだ」
「え?」
いきなり話しが変わって、わたしは戸惑った。
「高校の入学祝いにね。まぁ、正確には、入学祝いにくれたお金で叔父ちゃんが買ったんだけど」
わたしは計算した。叔父さんは二六歳だから、高校入学は十一年前だ。
「お母さん、専業主婦になってたよね?」
「うん。もっと正確に言えば、お母さんが着服したお父さんのお金で買った。
それはともかく、ここを出てからも、お母さんは叔父ちゃんを気にしてくれていた。
験力があっても無くても、お母さんはお母さんだ。叔父ちゃんを育ててくれた、お姉ちゃんなんだ。何があってもそれは変わらない。
だから、お母さんが知って欲しい事なら聞くし、何も語りたくないなら知らなくていい」
「恨んでないの?」
「どうして?」
キョトンとした顔をする。
「だって、お母さん、高校を卒業したら、叔父さんを残して家を出たんでしょ?
淋しくなかったの?」
叔父さんは悩ましげに眉を寄せた。
「う~ん、そうだなぁ……
最初のコメントを投稿しよう!