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朱理、ここだけの話だぞ」
「うん」
「誰にも言うなよ」
「うん」
「特にお母さんの前では、一切思い出すな」
「うん……」
「本当に出来るか?」
「たぶん……」
「…………………」
叔父さんは疑わしそうに、わたしの顔を見た。
そんな顔したって仕方ないじゃないかッ。言わないのはまだしも、思い浮かべるのなんてコントロール出来ないよ。
「まぁ、仕様がないか。
淋しかったよ。今まで面倒見てくれたお姉ちゃんが居なくなったんだから。
出て行く時は泣いて嫌がったし、その後も何度も淋しくて泣いた……
って、何だよその顔は?」
「い、いえ、別に……」
しまった、感情が顔に出た。
「でも、恨んだ事なんてないな。
むしろ、今は出て行ってくれて良かったと思ってる」
「何で?」
「だってそうだろ?
もし、叔父ちゃんのために家に残ったとしたら、お母さんに返しきれない借りが出来ちまう。
家を出たから、お父さんとも出会ったし、朱理たちも生まれた。
幸せになれたんだ。
叔父ちゃんも、お前たちに会えて嬉しかったし……爺さんもそれは一緒だ」
「だから、お母さんが出て行って良かった?」
「ああ、結果オーライって事だな。
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