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結婚して、子供も出来て、経済的にも困っていない。幸せと言って問題ないだろ?
その象徴だったんだよ、このバイクは。
また乗る事になるとは思わなかったけどな。
それにしても、爺さんが、よく捨てずに取って置いてくれたよ」
お祖父さんも、叔父さんの思い出を取っておきたかったんじゃないかな?
わたしは、ある事に気が付いた。
「おじさん、たしか十月生まれだったよね?」
「ああ、今月の十六日だよ」
「もうすくじゃない!」
「この年になると、どうでもいいよ」
そう言い残すと、叔父さんは自転車を担いで階段を降りていった。
どうでもいいって言ってたけど、わたしは叔父さんに何かプレゼントをしようと決めた。
お母さんが、叔父さんを気にかけていたように、叔父さんはいつもわたしを心配してくれている。
全てが上手く行くなんて事はないのだろうけど、わたしは決して独りじゃない。
失った友人を取り戻せないとしても、二度と失わないよう全力を尽くそう。
わたしは修行を再開すべく、本堂に向かった。
―終―
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