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「いいよ、俺は勝手にやってるから。君は、ゆっくり書いてればいいよ。」
「本当?じゃあお言葉に甘えて。」
恵子は、こういう細かい作業が好きであった。隆は、自分で冷蔵庫からビールを取り出すと、グラスに注ぎ、テーブルに用意された夕飯のおかずを突きはじめた。
「ああ、その葉書、俺が明日の出勤の時に出してくるから。」
「え?いいの?」
「うん、ちょうどポストの前通るから、出しておくよ。」
「ありがとう、助かるわ、隆さん。私は、優しい旦那様が居て、本当に幸せ者ね。」
恵子は、隆に微笑んだ。恵子は一通り、葉書を書き終えると隆に、それじゃあお願いねと葉書の束を手渡した。
翌朝、隆は、恵子から受け取った葉書を携えて、家を後にした。隆は、近くのコンビニに立ち寄ると、その葉書の束をしばらく苦しげに見つめ、ビニール袋に詰めると、ゴミ箱へ放り込んだ。
「ねえ、隆さん、今ね、赤ちゃんが私のお腹を蹴ったの。」
恵子は、隆が帰宅すると、嬉しそうに報告した。
「そうかあ。もう6ヶ月だもんなあ。」
「うん、すごく元気だから、私は男の子だと思うの。」
「まだわからないだろう?」
「ううん、きっとそう。」
「そうかなあ。」
「私、男の子だったら、隆行にしようと思ってるの。あなたの名前から一文字取って。」
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