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僕は25歳の独身男で、お笑い芸人を目指して沖縄から上京して、東京下町の安いアパ ートに住んでいる。
今の僕は、まったくと言っていいほど名前を知られていないピン芸人で、一応タレント事務所には所属しているけれど、芸人としては経済的にとても食べていくことはできない。
こんな僕は、食べていくために自宅近くのコンビニで、アルバイトをして何とか生計を立てている。
僕がアルバイトをしているコンビニは、下町の小さなコンビニで、夫婦のおじさんとおばさんが経営している。
決して時給は良くないけれど、コンビニのおじさんとおばさんの人柄と、僕が芸人として急な仕事が入った時臨機応変に対応してくれるから、僕はこのコンビニでの仕事を続けている。
今日もいつものように朝からコンビニに入って商品の陳列作業をしていると、少しお年寄りのおばあさんが何かを探しているようで、僕は声をかけてみた。
「何かお探しですか?」
するとおばあさんが僕の方を振り向いて、
「娘から単四の電池を買ってくるように言われたんだけれど、どれなのかよくわからないのよ!」
と話してくれた。
「単四の電池は、こちらですよ!
単三の電池と見分けにくいですよね!」
僕がアドバイスすると、おばあさんが笑顔で答えてくれた。
「ありがとう!
これいただくわ!」
僕は、おばあさんをレジに案内して、商品を袋に入れて手渡した。
「ありがとうございます。」
おばあさんは、終始笑顔で、
「助かったわ!」
と言って、お店を出て行った。
僕的には、たいしたことしてないけれど、こんなに喜んでもらえて嬉しかった。
このコンビニのある下町は、高齢化が進んでいて、こんなことがよくあるのである。
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