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夕焼けに染められた燃えるような海。
海岸に打ち寄せる波の白。
それらの向こう、水平線に沈みゆく太陽。
ぼんやりと自宅の窓からそれを眺める。
先ほどまで読んでいた本を置いたサイドテーブルも本自身も、薄らと色付いていた。
黄昏時。
逢魔が時。
この時間を表すことばはいくつかあるけれど、別に名称はどれでもいい。
光が闇に移り変わるこの時間が好きだった。
最近はその時間の海を見るのが好きだ。
前は山だった。
たんに大学でこちらへ来るまで山に囲まれていたのもあるが、山に太陽が沈み込み、空が赤紫色や菖蒲色に染まる様はとても美しかった。
そんな私の至福の時は、玄関のほうから聞こえてくる音により妨害された。
ガタガタとなる音に眉根を寄せる。
ここは大学生が住むには不相応な、それなりに値の張るマンションだ。不審な輩が間違えて入ってくることはないような場所。
近所迷惑なヤツは誰だと思いながらも、ソファからは立ち上がらずに外を眺めた。
もうほとんど太陽は沈んでいる。
最後の一口の珈琲を飲み干して立ち上がる。
キッチンでさっとコップをゆすいでから、未だガタガタ聞こえる音にため息をつく。
リビングの電気をつけるために部屋の入口へ近づいた時。
ガタガタ聞こえていた音が止んだ。
ふと、結局何が音を立てていたんだろうという好奇心がむくりと起き上がった私は少しだけ外を覗いてみようとリビングの扉を開け、廊下に出た。
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