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「・・・・・・・・なにっ?!」
リビングから出た廊下。
そこにはいつの間にか人が立っていた。玄関のドアを動かす音はしなかったのに。
じっと目が合う。
艶やかな漆黒の髪に、黄金色の稲穂を思い出すような金の瞳。細い輪郭に筋の通った鼻、薄い唇を持つその顔はかなりの美形だ。
そこらの芸能人なんか目じゃない。
どこか品の漂うオーラに圧倒された。
思わず見惚れていたが、ふと我に返ってリビングに逃げ込んだ。
手近にあった仕舞い忘れていた掃除機から長い棒の部分を抜き取り、美形な不審者に向かって構えた。
「誰?どうやって入ってきたの?」
威嚇しながら美形な不審者に問えば、ずっとぽかーんとこちらを見ていた不審者は慌てだした。
「す、すまぬっ!!
まさか我が妃が、まだこんな幼子だとは思わんかったゆえ、迎えに来てもうた…!
ま、また出直すからに、そなに怯えんでくれ…!!」
「幼子………??」
意味不明なことを吐かす不審者をじっと見つめていた瞳が、「幼子」の一言を聞いた途端に僅かに剣?を含むものに変わった。
目の前にいる美形は、見たところ20代半ば。十も歳差のない奴に幼子と言われる謂れはない。
オロオロと美形台無し、いや、オロオロとしてなお美形の不審者の鼻先に掃除機の棒を突きつけた。
「私は、幼子じゃない。
こう見えても、20歳だから。成人してるから。」
「なにっ?!」
驚きに満ちた表情の不審者にイラっときた私は掃除機の棒を鼻先に押し付けてグリグリしてみた。
なのにニヤっと笑った不審者はバッと後ろに後ずさっていく。
それを見て、いや笑顔は見なかったことにして、さすがに掃除機の棒を押し付けたのは悪かったなぁと思い、今帰れば何も無かったことにして警察にも言わないから出て行けと言うと、それはできないと申し訳無さそうに言われた。
なら警察に電話するからと宣言し、携帯をポケットから取り出そうとしたその瞬間。
「アルバーニ様ぁ!
お妃様は見つかりましたかー?」
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