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如月はベッドからよろよろと起き上がり、壁伝いに窓まで歩いた。
ガラスで全面を覆われた、今、如月がいる部屋は頭がおかしくなりそうなほど落ち着かなかった。
如月の向かった先は唯一外の景色が半分ほど見える細長い窓辺だった。
「お散歩でもしますか。すぐ用意させますよ。」
鼻で少し笑い、部屋外に出ると入れ替わりに小さな若者が入って来た。薄い水色の白衣を着たその若者は、ここの看護師のようだった。
「如月さん、お外へいく準備が出来ましたよ。
車椅子に乗りますか?」
「いえ、歩きます。」
何度かふらつき、その場に竦み、その看護師に支えられながら、病院前のちょっとした広場までゆっくりと歩いた。
ベンチに座り陽の光を浴びると、ほんの少しだけ気持ちが和らいだ。
あずみのは無事にかえれたのかとふと考え、内ポケットから手帳を出し写真を見た。
「如月さん・・・お荷物は?」
「いえ、今日はこの手帳、1冊しか持ってきていません。」
「それだけですか?」
「ええ。」
「着替えは・・・」
「ない。泊まるとは思ってなかった。」
「ご家族が後からお持ちになるのですか?」
「家族もないよ。」
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