四、忠誠、山波の愛し方

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「何も聞いてないが、調べておくよ。 俺と一緒にいると谷中も嫌な思いをするだろうから、あまり声をかけるな。 食堂にいる鶴屋というやつに手紙でも渡しておくから、あいつに聞いてくれ。」 そう言って教室からも研究室からも遠ざかった。 山波は今日、久しぶりに寮にいた。 周囲がうるさすぎて勉強に集中できないからだ。それだけではなかった。 ああいった類の話しはあっという間に広がり、その日のうちに学長の耳に入り、話しを聞かれるためだけに時間を割かれ、 自分の予定が変更されるのが煩わしくてたまらなかった。だがすぐ処分にならないのがまた厄介だった。 読もうと思って借りてきた本も、表紙をめくっただけで、目次にまでも到達してなかった。 「先生・・・・」 寮のドアをノックしてきたのは鶴屋だった。 「今日、予約の日ですよ。行きましょう。」 「あ・・・そうだった。また忘れるところだった・・・・」 今日の一件で如月のことを忘れかけていた。 今この燃え上がってしまった火の粉を、どうやって鎮火させるのかも手立てがつかないまま、さまざまな事を考え、答えが出ないままに次の問題が湧き上がり、を繰り返して頭の中はいっぱいだった。 「僕が運転します。今日は絶対間に合いますから大丈夫ですよ。」 「ああ・・・」 「先生、大丈夫ですか。しっかりしてくださいよ。」 「ああ・・・お前もやっぱり俺の事、軽蔑しているのか?」 「ぜんぜん。してたら来ませんよ。 それよりやっぱり僕の見込んだ先生だけあるなって思いました。 授業に関係のない質問は受け付けないって。かっこよかった・・・・ やっぱ、弟子にしてもらってよかった・・・って思いました。」 「まだ弟子にした覚えはないぞ。」 「そうなんですか?」 「お前24番だろ。」 「そうでした・・・・。」 「2学期では絶対に20番以内に入れ。できれば、200のついていない。」 「それは無理っす。」 学校のボロ車は、この間のことがあってから、カラカラと変な音がするようになっていた。 なるべくその音がしない速度で走ったが、山波はそれにイライラしているようで何度も腕時計を見た。それでも5時には充分、間に合った。 鶴屋が受付を済ませている間もずっと、山波は待合の隅から隅までを歩き回った。
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