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「鶴屋さんー」
名前を呼ばれると手を上げて返事をし、即座に中へ入っていった。
「今日はどうされましたか?」
「とりあえずこいつの診察を・・・那珂先生、山内和人をご存知ですか?」
山波は鶴屋より先に那珂の前にある患者用の椅子に座って、いきなり切り出した。
「ええ・・・あなたは・・・」
「私は山内和人さんの弟、隼人が通っている大学の教師、山波と申します。
大至急、山内和人さんにお聞きしたいことがあって探しているのですが、先生が居場所をご存知と聞いてやってきました。」
「ええ・・・まあ、大学の同級生で何度か新薬の実験データーを彼からもらったりしています。」
「それだけですか?それはいつのことですか?」
あまりの勢いで、前のめりで聞いてくるので那珂は少しのけぞって
「実は・・・山内には口止めされているんですけど・・・
今、山内の弟がここにいるんですよ。」
「隼人が・・・」
「ええ、すごくけがをしていて・・・
たぶん暴力を受けたような感じで、一応の手当てはしたんですけど・・・
警察に報告するべきか悩んでいたところなんです。それと、もうひとり、明らかに様子のおかしい患者が一名。
何も手当はしなくていいと強く言われているのですが・・・」
「会わせていただけますか?」
「ええ・・・・」
那珂に案内されて、病室ではない奥の物置のようなところへ連れていかれた。
「ここです。
私は中を見るなと言われていますから・・・すいません。ここで失礼します。」
那珂はできれば関わりたくないといった感じに見えたが、山波はここまで案内してもらえただけで十分だと思った。この扉の向こうに如月の手がかりがあるはずだ。
布団や備品が置かれた奥に、一台ベッドがあり、その脇のパイプ椅子に座っていたのは隼人だった。
人相が変わるほど顔を酷く腫らし、頭にも包帯を巻き、かわいかった姿は見る影もなかった。
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