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和人は不穏な笑を浮かべて近づいてきた。
「如月教授。懐かしい。」
如月はニコリともしなかった。
「ココはいったい何の施設だ。」
「それを知ってどうしますか?」
和人は如月の警戒した顔を見て声をあげて笑った。
「如月さんには特別に教えてあげますよ。
ココは新薬や新しい手術方を検査してデータを取っています。でもここにいる患者は、みなさん自分から進んでココへ来るんですよ。
まあ、僕たちもチョッとは営業には行きますけどね。けっこう喜んでいただけています。
病院を出されたら帰る家のない人って結構いるんですよ。
誰しもが日の当たる場所を歩けるとは限らない。
まさか、という人生の溝に落ちる人だっていますよ。そういう人たちの居場所を提供しているだけです。」
「それで君は金儲けをしているのだろう。」
「僕も生きていかなければならないのでね。少しは・・・」
「君の幸せはいったい何人の犠牲の上にあるんだ。」
「さあ・・・足元は見たことがないのでわかりません。
では、あずみくんのところに参りましょうか・・・」
如月は案内されるがままに細長い廊下を歩み、表からはそこに部屋があるとは思えないような奥に通された。
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