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バカにしたような甲高い笑い声をあげながら、指先で如月のほほを流れる涙を指でたどった。
「クールで知的で氷のように冷たいのにみんなに愛される。
羨ましいじゃないですか。頭も良くて将来も約束されている。
望まなくても全てを手に入れてしまう。
僕の欲しいものはみんな持っている。
だからあなたの大切なものをもらった。
でもたった1個じゃないですか。」
如月は山内をもう一度見た。いったいどんな顔をしてこんなおそろしい事が言えるのかとまじまじと見た。
悪びれる様子もなく、次から次と動く唇に震えるほど苛立った。
「それで、できればもう一つほしいものあるんですけど。」
如月は返事すらしなかった。もう一刻もはやくこの場を立ち去りたかった。
「山波さん。いただけませんか?」
「断る。」
「でも来ますよ。山波さんは、絶対にここへ来る。
その時、あなたが山波さんを僕にくれるならこのままあなたには何もしない。
けれど山波さんを僕にくれないのなら、あなたは僕とずっとここにいる。
どちらがいいですか?」
如月は一度額に手を当て、山内の顔を見てきっぱりと言った。
「あずみと隼人も返してやってくれ。私はそのくらいの価値があるはずだ。」
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