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山内はそのキリリとにらみつけた顔に感動し、猟奇的に笑った。
「いいですよ。あなたならきっとそう言ってくれると思っていました。
そういう自意識過剰なところ、大好きです。
あずみ君は僕の知り合いの病院に入院させます。隼人はその付き添いとして行かせましょう。
何かあっても、ここへ連絡が入るようにしておきますから、あなたは何も心配せずにここで私と暮らせますよ。」
「あずみも隼人もうちの鈴木さんに迎えに行くよう、屋敷に電話をかけてくれ。」
「それはちょっと・・・あずみ君にはまだ治療が必要ですし・・・隼人は・・・」
「隼人ももう自由にしてやれ。可哀そうだと思わないのか。」
「如月さん・・・違いますよ、根本的なことをわかっていない。
隼人は、どこでどんな風に生きるのかを理解した上で自分から戻ってくるんですよ。
帰巣本能です。僕はほんのたまに電話をかけるだけ。
それでもちゃんと言うことを聞くように、小さい時からしつけをしてあるんです。
だから、如月さんのところで飼いならせないんですよ。」
「彼はやっと本当の愛を知ったところだったんだ。頼む。自由にさせてやってくれ。」
「如月さん・・・頼むとか、言ってほしくなかったな・・・
まあいいです。賭けましょう。僕の元から離れて、あなたに飼いならせるかどうか・・・
あ、あなたはここにいるんでしたね。」
また山内は気味悪く館内に響き渡るような大声をあげて笑い出した。
何処から現れたのか二人の白衣を着た男に両腕を掴まれ、その部屋から出されようとしていた。
隼人は涙を流しながら如月の名前を何度も叫んだが無情にも扉は閉められ、二人の様子を見ることもできなくなった。
「では、特別室へご案内いたします。」
白衣を着た男は、同じフロアの角にある小さな個室へと連れて行き、ベッドに拘束すると、血圧や脈拍、心拍数の計測器をとりつけられた。
「山波さんに助けを求めますか?電話貸しますよ。山波さんに電話を掛けてくれるなら今すぐ、はずします。」
山波の挑発するような言葉に、如月はなにも言わず横を向いた。
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