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「あずみ、髪は又、伸びるよ。」
「ええ・・・でも、あんなに長くきれいに伸ばすにはかなりの時間がかかるでしょうね。手間もかかるし・・・・」
「あずみが思っているより、あずみの髪はきれいではありませんでしたよ。
手間と言っても、鈴木さんが髪をとかしたり、三つ編みを結わなければ寝ぐせのままだったでしょう。」
「お兄様がどう思おうと、僕の中では最上級に美しい髪でした。
黒くてしっかりしていてとても長くて・・・
失ったものはいつまでもキラキラと美しく輝くものです。
だから、僕は鏡を見るたびに、ため息と後悔が服を着て立っているようにしか見えないんです。」
「だから私は切らないほうがいいんじゃないかと言ったんだ。」
「でも・・・・」
「まあ、まあ、その話は・・・せっかく緑山さんも来たんだし・・・」
鶴屋はその場の空気を変えようとあずみと如月の間に割って入った。
緑山はその光景がとてもうらやましかった。
ついこの間までは、自分もそこにいたのに、なぜか今はそこに入れない透明の仕切りのようなものがあるような気がしていた。
「教授、山波さん今日は捕まえましたよ。3人で追い詰めました。
今度ごはん一緒に食べる約束しましたよ。」
「そうか。」
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