六、真実、それぞれの愛の終わり方

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「お兄様、この方、僕を走らせたんですよ。しかも全速力で。」 「山波さん、足が速いから・・・でもあずみ君も足が速くて・・・あずみ君が捕まえたんですよ。山波さんを。」 「そうか。」 「スニーカーってびっくりですね。思った以上に早く走れました。」 「そうだね。いっそ、スポーツでもやってみたらどうだい。」 「お兄様、その期待は迷惑です。」 「そうか」 「緑山さんもどうですか?山波さんと一緒にご飯。」 緑山は一瞬、向き直って笑みを浮かべた。 しかし、鶴屋のその奥の顔は一つも笑っていないことに気が付いた。 「いや、則夫には遠慮してもらおう。価値観の違うものと食事をするとお互い辛いだけだ。」 如月は緑山の顔も見ずにそうきっぱりと言い放った。 「え、でもそんな・・・」 鶴屋は困惑した顔で、如月と緑山の顔を交互に見た。 「だな・・・今日は帰るよ。」 緑山は部屋を出て行った。 あの時、あそこを出た時にもう、戻れないと頭ではわかっていた。 けれど、心のずっと奥のほうで、何かを期待し、ぬくもりを求めて知らずに足がここを向いていた。
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