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四、忠誠、山波の愛し方
隼人がいなくなって2日経とうとしていたが、雅は、週末だし兄と実家にでも帰ったのだろうくらいにしか思っていなかった。
それより心配だったのは、もう何日も研究室に如月が姿を見せなかったことで、人手不足もあって雅もこの2日間は手伝いに駆り出されていた。
あの鶴屋も雑用としてだが、研究室に呼ばれていた。
夕べ、帰り際に、明日も手伝ってほしいことがあると緑山に言われ、まじめなことくらいしかとりえのない鶴屋は朝早い時間に研究室に来た。
日曜日で、しかもまだ6時を少し回ったところだった。
そんな時間に誰もいるはずもないとうすうすは感じていたが、次に何時に伺えばいいのかを知りたいだけの、ただまじめな鶴屋は、何度も緑山に電話をかけた。
当然、出ない。
そのまま、寮の部屋に帰って、電話がかかってくるのを待つつもりだったが、ついでということもあって、山波の部屋をノックしてみた。
何度かノックしてもでないので、ちょっとドアノブを回してみた。
鍵はかかっていない。
鶴屋はそのままドアを開いて中に入った。
「すいません。今日は何時にいけば・・・・・・・」
部屋の扉は開け放たれ、玄関のドアを開けただけで狭いベッドで二人が重なって眠る姿までもが見えた。
鶴屋の声で起きた山波が布団を持ち上げると、隣に緑山の白い背中が見え、鶴屋は声を失った。
山波はゆっくり上半身を起こし、メガネをかけて鶴屋を確認すると、もう一度メガネを外し、緑山に布団をかぶせて静かに起き上がり、裸のまま鶴屋の方へ向かって歩いてきた。
鶴屋は驚きのあまり動くことすらできなかった。
たぶん、この時は息も吸えなかっただろう。
その鶴屋の胸を押し、ドアの外へだして鍵を閉めた。
髪をかき揚げながら、もう一度ベッドにもぐって緑山を抱きしめた。
「朝・・・?」
「まだ外は真っ暗だよ。」
「本当?」
緑山も山波の胸に顔をうずめ、二人はまた夢の中へ戻っていった。
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