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私たちは、とても仲の良い夫婦だった。
彼はとても誠実で優しかった。
ただ、少しばかり不満があるとすれば、自分勝手で唐突な行動をとること。
突然旅行に行くと言い出したり、突然車を買ったり。
そのたびに私は驚かされ、怒ったり、呆れたり。
でも、彼の行動の中心には、いつも私への思いやりや心配りがあった。
旅行先は、私が行きたいと言っていたところ、車も雨の日に傘をさして買い物に出かけていた私を気遣ってのことだ。
私たち夫婦には、子どもができなかった。
彼は猫を二匹連れてきた。
子どもの代わりにはならないけど、その存在に癒された。
やがて、二人は年老いて、人生の終わりも見える頃になった。
「ねえ、あなた。私はあなたに先立たれたら悲しいから、どうか私より長生きしてね」
私が言うと、彼は笑って頷いた。
「ああ、いいとも。キチンと君を弔ってあげなきゃいけないからな」
彼の言葉に私は少し考えた。
「ねえ、あなた。やっぱり私が長生きするわ。あなたのこと、ちゃんと弔ってあげなきゃいけないもの」
私が言うと、彼は笑って頷いた。
「ああ、そうしてくれ。君に先立たれたら悲しいからな」
彼の言葉に私はまた考えた。
「ねえ、あなた。私どうしよう?あなたが亡くなったら、ちゃんと弔ってあげなきゃって思うけど、あなたに先立たれたら、やっぱり私悲しいわ」
私が言うと、彼は笑って頷いた。
「じゃあ、一緒に長生きしたらいい」
彼の言葉に私は少し考えて。
「そうね」
にっこり笑って頷いた。
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