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二次試験が終わっても、後期日程にも願書を出しているのなら、しっかり準備をしたほうがいいと促す。意外なオカン気質に、なんだか唖然としてしまった。
そして、ようやく一昨日、試験の結果が出た。遥は無事に合格していた。
土曜日で家にいた蓮見は、一緒にネットの数字を確かめ、狭い部屋の中で遥を抱き上げてぐるぐる回った。勢いでソファに倒れて、そのまま顔中にキスをしてくれた。「よかった」と、自分のことのように何度も嬉しそうに繰り返して……。
けれど、それきりだ。
日曜日に蓮見の姉の結婚式があり、結果を見ると、その足で実家に行ってしまった。最後に家族水入らずで食事をし、式にも一緒に行くよう頼まれたと聞き、しかもそれを断ろうとする蓮見に、遥のほうが行ってくれと頼んだのだ。
日曜の夜には帰ってきたが、年度末の忙しさのせいで、そのまま一度会社に行き、月曜からも帰りはずっと深夜零時をまわっている。
疲れている蓮見に、遥は何も言えなかった。
遥の誕生日もバレンタインデーも、お互いイベントに疎いせいで、ちょっとした贈り物をもらったり、チョコレートを贈り合ったりしただけで終わった。ホワイトデーが近いが、それもなんとなく盛り上がらない。
きっかけが掴めない。
遥は、このまま蓮見に飽きられてしまうのではないかと不安になった。
蓮見は元々ヘテロだ。遥は男で、三十路間近のおじさんである。
まだ若い蓮見は、何かの間違いで一時的に遥に溺れただけで、本当はもう遥を欲しがっていないのかもしれない。もう二度と、初めての頃のように、夢中で遥を抱くことはないように思う。そう考えると、心が重く沈んだ。
いつか蓮見が家庭を望んだ時には、潔く身を引く覚悟をしていた。その上で、今だけでもいいと蓮見を望んだはずだった。
けれど、今の遥にはそれができるかわからない。時間が経てば経つほど、蓮見を諦めることは、死ぬことより辛いことだと思えてくる。蓮見を誰かに渡すくらいなら、いっそ殺して自分も死んでしまいたいなどと、バカなことを考えてしまう。
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