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それに、もしそんな機会があったら、とっくにやっている。
こんな下僕生活からおさらばしている。
「見たか、今の気配りを。あれが本来あるべき姿なのだ。全く関係のない者にそれが出来て、下僕であるお前が出来ないだなんて、恥ずかしくないのか。お前には、下僕としての誇りはないのか」
「ねぇよ! そんなもん!」
「……まあいい。今日のところはこれをで手を打ってやる」
フンッ、と鼻を鳴らしながら、浅野が焼きそばパンに手を伸ばす。
あれ、珍しい。お咎めなしだ。
ぽかんとしていたら、なにアホ面を晒している、と浅野が言葉を続けた。
「今日は機嫌がいいのだ。後に面白い事が起こる予定でな。故に、今日ぐらいは、下僕の失態を免除してやろう」
「は?」
なんじゃそりゃ。首を傾げる。
パンッ、と浅野がパンの袋を綺麗に破りながらその口の端を持ち上げた。
「案ずるな。時期にお前にもわかる」
いや、別に知りたいわけじゃなんだいけど。
が、そんな僕の意見は、やはりどこからかあがった黄色い声にかき消され、結局その話はそれまでとなった。仕方なく僕も席に着き、自身の昼飯に手をつけ始めた。
――しかし、その約3時間後。
あの時なぜ、どうしてもっと浅野にその言葉の意味を追求しなかったのかと、僕は後悔する羽目になる。
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